雨期と乾期が明確なため、1年を通して水を豊富に確保することが難しく、農家にとっては厳しい気候のザンビア。安定して水を確保するべく始動した小規模かんがいプロジェクトに携わった社員から話を聞きました。

今回お話を聞いた人

家泉 達也

2000年入社/海外事業本部

経歴 農業工学科出身。三祐コンサルタンツに中途入社してからは、アジアやアフリカにおける、農業農村開発、かんがい開発などに携わる。本プロジェクトには、施設設計及び統括として参加している。

乾期でも農業で収入が得られるように、
農家の手で建設から管理までできる、
かんがいプロジェクトが発足

Q.プロジェクト発足のきっかけ

ザンビアは雨期と乾期が明瞭に分かれているため、水を豊富に確保できる雨期の間だけしか農作物を栽培できません。農家の人たちは、その限られた時期に栽培した作物を売ることで、乾期の間の生活を何とかやりくりしていました。もし、乾期も水を確保できれば、1年中作物が栽培でき、安定して収入を得られるようになります。これらの課題を解決するために、かんがいをつくることになりました。
通常のかんがいプロジェクトは、建設会社が専門の機材や資材で建設するのが一般的です。しかし、エンジニアリング的にレベルが高い分、技術的にもコスト的にも維持管理しにくいことが難点と言えます。これらの問題を解決するためにたどり着いたのが、Community based Smallholder Irrigation、略してCOBSI(コブシ)とよばれる小規模なかんがい開発です。現地農家に自らの手でかんがいシステムをつくってもらうことで、完成した後の運用やメンテナンスを自分たちで継続的に行ってもらうことを目的としています。COBSIプロジェクト自体は、隣国のマラウイで初めて導入しました。マラウイでの成果をJICAが高く評価してくださり、ザンビアでも実施する運びとなりました。

自主自助意識を引き出すために、
現地の方と一緒になって作業をする

Q.進行するにあたって、苦労したこと

マラウイで小規模かんがいを初めて導入するにあたって、どのような堰にすれば、水をせき止める機能を持ちながら、農家が自前でできるものになるのかとても悩みました。参考になる文献を探していたところ、東京の国立国会図書館で目にしたのが、木や石でできた「信玄堤」です。川の流れを変えて氾濫を防いだという、武田信玄が考案した制水技術にヒントを得て、より簡単に製作できるようにアレンジしたものを考案しました。そしてこれらの堰を現地の方につくってもらう際に大切なことは、一緒にやるということ。現地の方からすれば、海外から専門家チームがやってくると、「彼らがやってくれるのだろう」という意識が芽生えてしまいます。しかし、このプロジェクトは、やってもらうのではなく、自分たちの手でやることが重要。私たちが陸から、「あれをやれ、これをやれ」と指示をしていては、「自分たちでやろう」という自主自助意識は引き出せません。そのため率先して川に入り、共につくり上げていくという姿勢を見せることを心がけています。

マラウイ、ザンビア、そしてアフリカ全土へCOBSIを広める

Q.プロジェクトの成果

私たちは基本的に、現地の政府職員にノウハウを伝えます。そしてノウハウを学んだ政府の職員たちが、各自の担当地区へ技術を教えることで、ザンビアにCOBSIプロジェクトを広めています。かんがい一つあたりの農家数はおよそ20~30名で、広さとしては数十ヘクタールと、一つひとつはとても小さな規模です。しかし、それが100、200と増えていき、点から面にプロジェクトが広がっていけば、大きな影響力を持ちます。2009年~2011年の成果では、農家数にして6900名、2014年~2017年には倍近い12,600名へと成果を拡大させることができました。
今後の展望としては、ザンビアにプロジェクトを定着させることはもちろん、マラウイもザンビアも東アフリカでしたので、西側へも徐々に展開していきたいと考えています。現在、そのための調査もしているところで、いずれはCOBSIをアフリカ全土に広めていきたいです。

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